尊徳の仕法

 わが国の協同組合思想の芽ばえは、江戸時代末期の二人の農村指導者の実践にみることができる。
 その一つは二宮尊徳(金次郎)の指導による報徳社である。報徳仕法に基づく報徳社は1843(天保14)年に小田原(神奈川県)に設立された後、門下生によって各地につくられていった。
 報徳社は鎌倉時代に生まれたといわれる頼母子講を発展させたもので、構成員による加入金の積み立てを基金として、お金に困っている農民に無利息で貸し出した。これによって生産を伸ばし、ゆとりができたときには、その恩に報いるために借りた金より多くの金を返すといった方法をとった。

 そしてもう一人、村落改革を企てた人がいた。それは大原幽学という人だ。彼については余り知られていないが、その内にご紹介しよう。